黒い炎
「はぁーっ…」
深いため息を吐き出し、ベタつく唇を拭う。
「…うっ」
行為の後の相変わらずの気分の悪さに、口元を押さえる。
でも…今日は何時もとは何かが違った。
あんなにもイラつき事におよんだ事など、一度だって無かった。
何故だ?
原因は?
ふらつき歩く足を止めた。
「…鈴」
思わず呟いた名前。
最中にチラついたのは、鈴の兄に見せた安堵の表情だった。
自分には見せない表情。
考えるだけで何故だか無性にイラつく。
優弥には解らなかった。
このイラつきの原因が、『嫉妬』からくるものだとは…。
黒い嫉妬の炎が揺らめき、原因不明の苛立ちを優弥は抑えきれずにいた。