黒い炎

「くそっ…」



苛つきながら街をさ迷う。



『昴さんとデートだって』



何気ない会話…なのに無性に苛立った。



兄貴じゃねぇか…何イラついてんだよっ!なんなんだよ俺は。



兄と仲良く笑いあう鈴が頭に浮かぶ。



やっぱり変だ…なんだってんだ…。



「どうなってんだよ俺の"ここ"は!」



優弥はぎゅうっと胸の辺りを掴むと、苦しげに顔を歪めた。



嫉妬と言う名の黒い炎は、一瞬にして優弥の心に広がっていった。



「……ん…だよっ…」



"ダンッ"と壁を叩き、がくんと膝から崩れ落ちた。



この感情は何なのか…?



「…意味わかんねぇ」



壁にもたれ座り込んだ。



通り過ぎる人の群を、ただ…ぼんやりと眺めていた。

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