黒い炎
私はいつも、学校から帰ると庭と彼を見ていた。
そして、その傍らには兄かお手伝いさんがいた。
『けっして1人になってはいけないよ?』
兄のその言葉の意味が理解できなかった。
小首を傾げる私に、兄が困ったように笑ったのを私は覚えている。
私にもう少し社交性と知識があれば、きっとあの言葉の意味を理解できたのに…。
――…
いつものように、庭へと足を運んだ私の後を追う兄の携帯が鳴った。
家内に戻るように促されたが、大丈夫だと言い張る私を置いて兄は渋々出掛けて行った。