黒い炎
兄の代わりは誰もやってくる気配は無く、私は暫く只ぼんやりと庭を眺めていた。
『鈴ちゃん、今日は1人?』
いつもの優しい笑みで、彼は私にそう問いかけた。
頷いた私に"自分の手入れした庭木を見せたい"と言い、そっと手を引いた。
兄や父以外の男の人に触れられ、私はほんの少し胸が高鳴っていた。
早熟だった周りの子達に比べ、まだまだ子どもで恋だの愛だの知らなかった私。
彼の心情を計り知る事も出来ず、なんの躊躇もなく付いて行ったのだ。