黒い炎

「え?あ、ごめん鈴」


桜の後ろに隠れるようにして立つ、『鈴』と呼ばれた女は小さく首をふった。



「ごめんね?コイツ 優弥…あたしの弟」


「お…とう…とさん?」


桜のかげからそっと俺を見上げた彼女の瞳は、澄んだ色をしていた。


吸い込まれそうな瞳を俺に向ける鈴に、どうしようもなく触れたくなる。



「優弥!…この子は海棠 鈴 <かいどう りん>あたしの大事な友達だから」


桜は、俺の心を読んだかのように、動きを遮った。



"だからそこらのオンナと一緒にしないで"


桜の目はそう言っているように見えた。



「よろしく…鈴さん…優弥って呼んで?あと、驚かせてごめんね」


鈴は、伏し目がちにふるふると首を横に小さく振って答えた。
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