黒い炎
「お嬢様、お嬢様」
「ふえっ…は、なさん…うっ…うっ…こわかっ…ひっく…」
涙が止まらぬ私をキツく抱きしめたまま、華さんは優しく宥めてくれた。
「お嬢様…もう大丈夫…華が来ましたからね…大丈夫、大丈夫」
その優しい声と、助かったと言う安心感から、私はそこで意識を失ってしまった。
――…
―…
騒ぎは内密に抑えられていた。私の将来いに傷がつくからと…。
その後、彼の姿を見る事もどうなったかも知る事も無く、出入りしていた庭師達もがらりと替わっていた。
そして私は…あれから男の人が怖い。
兄にすら怯える私を見て、兄は酷く自分を責めた。