黒い炎
献身的な兄に、少しずつ閉ざしていた心を開こうとはしていたが、正直まだ男の人は怖い。
父にすら近寄れず、部屋で泣いてばかり。
「お嬢様…泣いてもいいんです辛い思いをしたんですから…華がお側にいますから」
「華…さん…ありがとっ…ひっく…うぁっ…う、わぁぁ…」
彼女の胸で思いきり泣いた。
父と母が家に居る事が少なく、甘える事が出来なかった私にとって、兄以外に唯一心を許せるのが華さんだった。
年の頃は両親と変わらぬ彼女は、幼い頃から私のそばにいて、見守ってくれている。
自分の家族と同様に、私も大切にしてくれた彼女には感謝してもしきれない。
私に気を遣う兄…優しくしてくれる華さん…2人の為に変わらなきゃ…。
そう思う鈴だが、その心には未だ暗い闇が雲谷のように広がっていた。