黒い炎
其れ其れの苦悩
《side 昴》
「べ、別に優弥くんに会いに桜ちゃんのお家に行ってるわけじゃ…」
焦って否定していたが、心の奥では彼が気になっているのだろう…鈴自身がそれに気づいていはいないようだが。
頬をうっすらと赤らめ、恥ずかしげにする鈴。
男の名を呼び頬を染める妹。
心に傷を負った妹の、変化を嬉しく思う一方で、それが出来なかった自分が情けなくもあった。
以前のように笑う事が無くなり、距離を置く妹を目にし自分を責めた。
あの時…無理にでも家の中に連れて入っていれば…。
悔やんでも悔やみきれない…昴もまた苦悩の日々を送っていのだ。