黒い炎

変わりゆく妹。


妹を変えていく男。



兄としてはどんな男か見定めておく必要があった。



『綾部 優弥』



鈴が彼に向ける視線が、他の者に向けるのとは違って見えた。



俺はあの時確信した、鈴は…彼に惹かれ初めていると。



きっと、鈴自身も気づかないうちに、自然とそうなっているのだろう。



だが、それは彼も同じだろうと俺は思った。



端正な顔立ちと、人を寄せ付けない独特の雰囲気を持っている。



彼もまた"何かしら抱えている"、俺にはそう感じた。



同じキズを持つ者同士…惹かれあっても可笑しくはないか…。



だが…妹が傷つくのはもう見たくはない。

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