竜王様のお気に入り

間違われた巫女

龍神が暮らす天界と、人間が暮らす人間界には、古よりの交流がある。


しかし交流とは言うものの、人間が龍神の加護を貰うという、一方的なものである。


天候を操る龍神の力の前では、天の恵みを待つだけの人間は、儚く弱い。


何十年かに一度、龍神の長である竜王様に生け贄を差し出し、各村の安泰を約束してもらうという交流。


それが代々受け継がれている、習わしだった。


－－－。


最近天候が不安定で、作物の育ちが良くない。


村人たちの脳裏には、当然、この忌まわしい風習が思い浮かぶ。


事実、前回の天候不良の時は、南の村から贄を出しているのだ。


北·東·南·西·中 の村。


ここら一帯の５つの村が、持ち回りで生贄を差し出すのが決まりで、順番からいえば、次はこの西の村から出さねばいけない。