竜王様のお気に入り
住み慣れた家を出る。


もう二度と、ここに戻る事はない。


サツキは、静かに歩みを進めた。


「姉様。
姉様は竜王様の所から、いつ帰ってくるの?
明日?その次?」


屈託なく問いかけるキサラギに、悪気はまったくない。


「そうね・・・。
帰って来れれば嬉しいんだけど・・・。
たぶん無理ね。」


「どうして?
竜王様はイジワルなの?」


サツキはキサラギに

「食べられちゃうからよ。」

とは、言えなかった。


「ふふっ・・・。
意地悪とは、違うと思うけど。
また会えたらいいわね。」


そう言って、サツキはキサラギの手を握った。

< 10 / 279 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop