竜王様のお気に入り
ハクリュウには届かないものの、コウリュウも十分に背の高い青年だった。


部屋から出るために下を向いて、ヤヨイはコウリュウの側を通り過ぎる。


トボトボと歩くヤヨイを、見下ろしていたコウリュウだか、自分の横をヤヨイの体が掠めた時、甘い香りが鼻をくすぐった。


コウリュウの瞳がすっと細まり、危険な誘惑が脳を刺激する。


「おい。
お前また、兄上の部屋へ戻るつもりか?」


声をかけられた事に驚いて、ヤヨイは立ち止まり、少しムッとして、コウリュウを見上げた。


「私には、どうしたらいいのか分かりません。
気がついたら、あの部屋にいたもので。
他に部屋があるのなら、そちらへ行ってもいいですよ・・・。」


ヤヨイの言葉が・・・。
自分を見つめるその、琥珀色の瞳が・・・。


コウリュウの誘惑を現実にしたいという、欲望に変える。


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