竜王様のお気に入り
観念したように、コウリュウは艶やかで美しい顔を、イオリに向けた。


疲れたように笑う、コウリュウのやるせない顔が、イオリには居たたまれない。


「イオリ。
あんな人間が存在するのか?
髪の色も、瞳の色も、甘い香りさえも、俺がずっと慈しんできたコハクと同じじゃないか。
・・・兄上の考えが、全然分からない。
ヤヨイを見た俺が、どんな気持ちになるのかなんて、兄上には知ったことではないのか。
ヤヨイの前で俺は、平静を装うのが精一杯だ。
兄上は、何であんな人間を連れて来たんだ。
いつもみたいな生け贄で、いいじゃないか。」


コウリュウは思いの丈を吐き出すと、イオリが用意した香り高いお茶を、一気に飲み干した。


「コウリュウ様・・・。
私がお側に居りますよ・・・。」


押し殺していたイオリの感情が、つい口から漏れる。


しかしイオリの切ない呟きは、コウリュウの耳には届かないでいた。

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