竜王様のお気に入り
「離れて下さい!早く!」


叫びにも近いイオリの声。


・・・そして。


あってはならない光景を見たのは、今、ここに一番居てはいけない人物。


偉大なる天界の長。


そう、ハクリュウ王陛下である。


やはりイオリだけに迎えに行かせるのではなく、愛するヤヨイを自らの手に抱いて部屋へ戻ろうと、わざわざ竜王陛下がお出ましになったのだ。


竜王陛下の黒曜石のような瞳が、すっと細まる。


コウリュウの背中に、冷たい矢のような視線が刺さった。


我に返ったコウリュウは、自分が感情に流されて、何をしたのかを思い知った。

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