竜王様のお気に入り
「コウリュウ。」


低く地を這うような冷酷な声が、今まで穏やかだったはずのコハクの部屋に響く。


「自分が何をしたのか、分からない訳ではあるまいな。」


平静を装って振り向いたコウリュウだが、ハクリュウの言葉を受けて、背筋に冷たい汗が流れるのを感じていた。


でも。


「勿論、承知しておりますよ?」


引き下がらないとでも言うかのように、コウリュウは気丈に答える。


そんなコウリュウを、庇うかのように、イオリが口を挟んだ。


「りゅ・・・竜王陛下。
コウリュウ様は、ここ最近のご多忙で、とてもお疲れなのです。
きっと・・・そう!
目眩でもおこされて、よろめかれて、しまったのですわ。
さぁ、コウリュウ様。
お部屋に戻りましょう?」


イオリは慌てて取り繕ってはみたものの、この場を離れるための理由には、てんでなっていない。
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