竜王様のお気に入り
「お願い・・・。
やめて・・・。」


泣きそうな震える声で、ヤヨイは静かにハクリュウに囁いた。


「ヤヨイは我のモノぞ。
ヤヨイに要らぬ興味を持つなと、言い置いたはずだが?」


ハクリュウは怒りを含んだ声で、殊更にコウリュウに言葉で詰め寄る。


「私には、兄上のお考えが全く分かりません!
私の気持ちなど、どうでもよいのですか?」


コウリュウは、自分の思いを兄にぶつけた。


「そなたに我を分かってもらおうとは、思っておらぬ。
そなたは、我の言葉に従っておればよいのだ。」


何という、自分勝手な言い種であろうか。


こんな言葉を使ってまでも、ハクリュウは、ヤヨイに触れたコウリュウを、許すつもりはないらしい。


「ハクリュウ!」


ヤヨイはハクリュウの胸に、顔を埋めた。


「もう、兄弟に手をかけないで。お願い。」


すがるような思いだった。

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