竜王様のお気に入り
「なぁイオリ。
竜王陛下に、王妃を迎えてみてはどうだろう・・・。」


コウリュウは治療が終わった事にも、イオリに名を呼ばれた事にも、気づいていなかった。


ただ考えていた事を、イオリに投げかけただけ。


「シリュウ(紫龍)なんか、適任じゃないか?」


「コウリュウ様・・・?
唐突に何を・・・。」


「竜王を退任するだなんて、俺は許さない。
コハクの命と引き換えに、兄上が造った今の天界だ。
投げ出させはしない。
イオリもそう、思うだろう?」


「コウリュウ様、私は・・・。
私は・・・。
竜王陛下に従ってもいいのでは、と、思ったりも致します。」


遠慮がちに呟いた、イオリの意外な返答に、コウリュウは僅かに眉を潜めた。


イオリなら、自分の考えに賛同してくれると、コウリュウは疑いもしていなかったのだ。

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