竜王様のお気に入り
そんな竜王陛下の悩ましい思いなど露知らず、シリュウはコウリュウからの申し出を噛み締めて、喜びに胸踊らせていた。


まさか自分が歓迎されていないなんて、思うはずなどなく・・・。


シリュウは、願ってもない権力が手に入る事に夢見心地でいたのだ。



誰もが美しく高貴な自分にひれ伏す。

王妃と崇めて膝まづく。

天界の民を、意のままに動かせる。



なんと甘美な立場だろう。


そして、あの偉大なる雄々しい竜王陛下が、自分だけのものになる。


シリュウは、竜王陛下に抱きすくめられる場面を想像して、うっとりと瞳を游がせた。


もし、そんな独りよがりな想像をハクリュウが知ったら、“消えろ”と一蹴されてしまうに違いない。


ハクリュウは自分のわがままを差し置いて、こういう自分勝手なヤツが大嫌いであった。


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