竜王様のお気に入り
代々、生け贄になるのは龍神から定められている家の巫女と決まっていた。


なので、その家に生まれた娘は“そうなる事”を前提に大切に育てられ、それなりの年端になるまでは結婚することもできず、結婚したらしたで今度は、巫女を産まねばならない宿命である。


何とも気の毒な話しだ。


そして今、その一世一代の大役が当たる年周りになりそうであった。


西の村では皆、その話で持ちきりで、村人たちは浮き足だっている。


「今年はついに・・・生け贄の年かなぁ」


「こう天気が不安定じゃなぁ」


こんな会話が、あちこちから聞こえてくるのだ。


「巫女様も、お勤めが出来て本望ってもんだな」


「おら達も、生きてる間に竜王様を拝めるんじゃ。
ありがたや、ありがたや」

< 2 / 279 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop