竜王様のお気に入り
徐々にぼやけていく、ハクリュウの体の輪郭に、シリュウは恐怖を感じた。


部屋の中は既に竜巻が起こりそうな程に、空気が渦巻いている。


「シリュウ。
覚悟は出来ておろうな。
我の意に背いたらどうなるか、知らぬわけではあるまい。
一度は見逃してやったというのに…。
バカな女よ。」


ハクリュウは獲物を捕らえる爬虫類のように、ゆっくりとシリュウに近づく。


端正に整った凛々しい顔に、笑みを浮かべた竜王は、圧倒的に美しかったが、この上なく恐ろしかった。


ガタガタと体全体を震わせて、最早シリュウは動く事すらできずにいる。

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