竜王様のお気に入り
「逃がすか!
貴様の非礼は許さぬ!」


ハクリュウは、右手の掌をシリュウに向けた。


見えない空気の束が、シリュウに襲いかかり、突き倒す。


つんのめる様に、無様に転んだシリュウは、自らの身を守るため防御の姿勢をとった。


そして紫色の光を、体から立ち上らせた。


透明感のあるアメジストの光は、あっという間に輝きを増し、シリュウを包んだ。


「ほぉ、本来の姿に戻るか?
では龍の姿で死ぬるがよい。
哀れよの…シリュウ…」


不敵な笑みを浮かべた竜王は、この状況を楽しんでいるかのようにも見えた。


「兄上!」


「ハクリュウ!」


二人は暴風に耐えながら、必死にハクリュウの暴走を止めようと、叫んだ。

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