竜王様のお気に入り
片膝を着いて、コウリュウはヤヨイを覗き込んだ。


琥珀色の瞳が不安に潤み、体が小刻みに震えている。


胸を締め付けられる感情が、コウリュウを支配した。


いたたまれない気持ちになったコウリュウは、静かにふわりとヤヨイの肩を抱き寄せる。


他意のない、自然な行動だった。


遠い昔、同じ色の瞳をした妹を、安心させる時と違わない。


あの時の、恋に気付く前の、優しい兄としての感情であった。

「ハクリュウが、行っちゃった・・・。」


震える声で、自分にすがるヤヨイを安心させたくて、ギュッとコウリュウはヤヨイを抱きしめた。


「大丈夫だ。
心配要らない。」


頼もしくも、優しいコウリュウの声に、ヤヨイは体の力を抜いた。


「今まで、悪かったな。」


コウリュウはそう言い残すと、ヤヨイの頭をポンポンと軽く叩き、音もなく窓から出て行った。


赤い光となって。

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