竜王様のお気に入り
ヤヨイは、咄嗟に立ち上がって、開け放たれた窓に駆け寄る。


窓から見える光景には、そう遠くない場所に、三匹の龍が漂う姿があった。


アメジストに輝く龍。

ルビーに煌めく龍。

そして、一際長大で雄々しく揺らめくのは…。
プラチナパールの龍。


ヤヨイは、その荘厳な姿に、思わず見惚れてしまっていた。


怖いという思いは、全く浮かんでこなかった。


しばらく彼等を眺めていると、不意に咆哮が、空気を振動させた。


何やら奇声のような甲高い声が聞こえてきたかと思うと、今度は地を這うような重低音が響き渡る。


彼等の言語だろうか。


彼等が吼えるたび、ビリビリと空気が振るえて、ヤヨイの体にも伝わってくる。


三匹は、何かを言いながら、しばらく牽制し合うように、空中を舞っていたのだが。


その均衡が崩れたのは、白龍がカッと口を開き、ブリザードが凶器となって、吐き出された場面からであった。


それをもろに浴びた紫龍は、硬直したまま地面に叩きつけられた。


ドスンという音が鳴り響いて、強い振動がヤヨイの体を襲った。

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