竜王様のお気に入り
紫色の輝きが、吹き付けられた氷に覆われて、一層美しく見える。


だが、如何せん、動く事ができないでいる紫龍。


体を氷の鎧で、固められてしまっているのだから。


冷ややかな瞳で見下ろす白龍と、哀れみの瞳を向ける紅龍は、同じ漆黒の瞳をしているが、その瞳に込めた思いは違っている。


白龍の瞳が僅かに細まると、また紫龍に向かって、口を開こうとした。


今度は口元に、パチパチと弾ける稲妻が伺える。


動けない紫龍に落雷を喰らわして、とどめを刺すつもりなのか。


雷などをまともに受ければ、凍った鱗の紫龍の肢体は、間違いなく、木端微塵に飛散してしまうであろう。


その時、紅龍が静かに白龍の前に移動して、低く吠えた。


二匹の龍が王宮を振り返り、見据える。


龍にとっては小さな窓に、ヤヨイの姿を確認すると、白龍の漆黒の瞳から冷たい色が消えた。

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