竜王様のお気に入り
紅龍は、言い終えると音もなく舞い上がって行った。

後には呆然と空を見上げる人間達を残して。


「竜王様~!
お待ち下さいませ~!
ヤヨイ姉様はどうなったのでしょう~!」

しわがれた声が紅龍に投げ掛けられたが、竜王が飛翔を止める事はなかった。

「姉様…。姉様…。」

品のある老婆が、地面に泣き崩れた。



「キサラギ…?」

老婆の背後から若々しい声がかかる。

キサラギと呼ばれた老婆はゆっくりと振り向いた。


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