竜王様のお気に入り
ヤヨイにとっては何ヶ月ぶりの、キサラギにとっては何十年ぶりの、感動の再会をぶち壊す

“ぐ~っ”

という緊張感のない音がした。

ヤヨイより少し離れた後ろに威厳たっぷりに立っている、白く豪奢な衣装を着た銀髪の美青年。

音の発信源は、その美青年のお腹であると思われた。

またも“ぐ~っ”と鳴る。

「ヤヨイ。何だ?この音は」

全く表情を崩す事なく、真面目な顔で青年は腹に手を当てて、ヤヨイに聞いた。

「ハクリュウ。お腹が空いたのね?」

ヤヨイは振り返って、少し微笑んだ。

「腹が…空く…?」

キョトンとした不思議な表情で、ハクリュウと呼ばれた美青年はヤヨイに聞き返した。

「ハクリュウ…?…白龍…!?
まさか竜王様ですか?」

キサラギはハクリュウを見上げて後退りした。



< 257 / 279 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop