竜王様のお気に入り
「ごめんねキサラギ。何処か静かにできる所ある?」

ヤヨイは小声でキサラギの耳元で口早に聞いた。

「では、私の家に行きましょうか?」

ゆっくりとした口調でキサラギは答えて、もっとゆっくりとした足取りで歩き出した。

「おい!婆さん。
その人達は婆さんの知り合いかい?」

村人に聞かれ、キサラギはにっこり笑って教える。

刻まれた深い皺が、よりくっきりとキサラギの顔に浮かんだ。

「ええ。ええ。
大切な大切な、私のお客様ですよ。
もう行ってもいいかしら?」

「あぁ…。もちろんだよ。
でも、誰なんだい?その客人。さっき竜王様って言ってたろ?」

怪訝そうに村人は質問した。

< 259 / 279 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop