竜王様のお気に入り
当然この、好き勝手な村人たちの話は、巫女の家でも話題になっていた。


実際、天候不良で作物は不作になっているのだ。


こんな会話が成されるのも仕方のない事と、巫女の家族は真剣に捉えていた。


「サツキよ。
覚悟は出来ているな？」


「当然です。父様」


巫女は、20歳の若く美しい娘で、名をサツキという。


サツキは今にも泣き出しそうな表情を必死に隠し、気丈に笑みを浮かべてはいるが、とても穏やかで儚げな雰囲気の娘だ。


「姉様！
私、姉様が竜王様にお渡りになる姿を、ちゃんとお側で見届けますから！」


そんなサツキに朗らかな声をかけたのは、妹のヤヨイであった。


サツキより３つ年下の17歳。


ヤヨイは、自分に与えられたお側付きの重要な役目を、重く受け止めている。


だからこそ不安なサツキの心情を想い、敢えて向日葵のような明るい笑顔を、ヤヨイは姉に向けて見せた。

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