竜王様のお気に入り
「ヤヨイ。
怯えないで。」


優しく諭すハクリュウに、ヤヨイは震えた声で答える。


「だってこれから私、生け贄として食べられちゃうんでしょ?
でも私、巫女じゃないのに大丈夫なの?」


「お前が考えてる食べるとは、違うよ。」


片腕で抱き上げていたヤヨイを、両腕でギュッと抱きしめるハクリュウは、ヤヨイの小さく柔らかな体を、芳しく嗅いだ。


今まで生け贄の人間を抱いて、こんな風に思った事なんてなかった。


なぜなら、生け贄を抱く事が即ち、食事であったから。


そう、食べ物を必要としない龍にとって、人間を抱き生気を取り込む事こそが、「食事」なのである。


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