竜王様のお気に入り
コウリュウは、ハクリュウの実の弟であった。


しかし、ハクリュウは弟の前でさえも、素の自分でいる事を止めていた。


信用していないわけではない。


あらゆる事を想定した上で、そう振る舞っていた。


「ですが兄上。
新しい生け贄は分け与えてもらわねば、民達の忠誠心が揺らぐ元にもなり兼ねません。
それに、人間の生気を取り込まねば皆、感情を持たない本来の姿に戻らないとも限りません。」


「そうなりそうな時は、人間から新たな贄を出させればよい。
我の思い一つでそれは叶う。」


何事にも、何人にも、執着してこなかった竜王陛下が、生け贄の小娘相手にこんなワガママを言い出した事に、コウリュウはただただ驚いた。


と、同時にヤヨイという人間にも、危険な興味が湧いた。


甘く香るこの人間は、今まで何の関心をも示さなかった竜王陛下を虜にする程に、魅力的なのだろうかと。


それに、コウリュウは見てしまったのだ。


ヤヨイの瞳が、琥珀色である事を・・・。

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