竜王様のお気に入り
「明日にでも、アンジェを皆に分け与えよう。
しばらくはそれで、民達を納得させておけ。
天界中に触れを出し、余計な感情は排除せよ。
コウリュウ・・・。
そなたには、もう一度言っておく。
ヤヨイは分け与えぬぞ。
よいな?
分かったら下がれ。」


こういう時のハクリュウは、絶対に意見を曲げることはないのだ。


コウリュウは竜王陛下説得を、残念ながら諦めた。


丁寧に一礼して、部屋から出たコウリュウだったが、実はまだ信じられない。


兄はあの天界の住人達が殺し合いをした大惨事を経験し、天界統一を成し遂げた偉大なる龍である。


人間の生け贄を分け与えなければどうなるか、十二分に分かっているはず。


それよりも人間を優先するのか?


それはあの人間が、琥珀色の瞳を持っているからなのか?


そんな事を考えながら、コウリュウの足は食堂へと向かって進んでいた。

< 51 / 279 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop