竜王様のお気に入り
広い宮殿の片隅に、ひっそりと食堂はあった。


質素な扉の前で一つ息を吐くと、コウリュウは静かに手を掛け押し開けた。


中へ足を踏み入れると、内装もまた質素であった。


暮らすには不自由のない必需品は、一揃え置かれている。


だが部屋の中央に置かれたベットだけが、一際目立っていた。


部屋の雰囲気に似合わない、華やかなベットだ。


そのベットの上に少女が一人腰かけている。


「アンジェ。」


コウリュウは感情なく呼びかけた。


「・・・。」


アンジェはゆっくりと振り向いて、熱を帯びた声を出す。


「今日はまだ、竜王様は来て下さらないの?」


アンジェはトロンとした目付きで、コウリュウを見つめた。

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