竜王様のお気に入り
コウリュウは、柔和な笑みをヤヨイに向けるハクリュウに驚き、納得いかずについ言葉に出してしまった。


「兄上、どうしたというのです?
ヤヨイはたかだか生け贄の、人間の小娘ですよ?」


ハクリュウは目だけを動かして、コウリュウに冷たい視線を投げた。


コウリュウは瞬時に舞った矢のような風に吹き飛ばされて、壁に打ち付けられる。


背中を強打したコウリュウは、しばらく息が出来ない。


「コウリュウさん!」


ヤヨイは驚いて、うずくまるコウリュウに駆け寄った。


「大丈夫ですか?」


コウリュウはヤヨイの手を振り払い、ヨロヨロと立ち上がった。


こんな時は、兄との絶対的な能力の違いを痛感する。


兄は視線だけで、いとも簡単に自分を吹き飛ばしてしまったのだ。

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