涙なあたしと笑顔なあなた
家
side 聖
「あんたなんか産まなきゃよかった!!」
母さんの口癖。
俺じゃない。春に向けられた言葉。
「・・生まれて来てごめんね。今からご飯作るからちょっと待ってて」
春の驚くほど冷静な返事。
俺と春は血が繋がってない。
春が母さんの昔の父さんとの子供で、俺がいまの父さんとの子供。
母さんは俺の父さんが大好きで、前の父さんとの間に出来た子供である春が邪魔だったみたいだ。
俺は"姉ちゃん"って呼んでたけど、それも禁止された。
"他人なんだからやめなさい"
両親に言われた。
春にはこずかいが無い
春のご飯が無い
春の言葉は全部無視
春が全部家事をする
全部当たり前みたいに10年以上ずっとこうだった。
「他人なのに傍に居させてもらえるだけありがたいと思いなさい」
あり得ない事なのに春は全部受け入れた。
愚痴なんかこぼさない。
泣いてるとこなんか見た事無い。