38℃の柑橘系
「いった……なにすんの、暴力反対」
叩かれたところをさすりながら冷たい視線を向けると、直弥がやれやれと首を左右に振り
「あのなぁ、今時の男の子はガラスのハートなんです。 そんな簡単に声かけられるかっつーの」
「まあ、直弥は羊の皮を被った狼だし?」
「つうかアレだよな、祐都モテんだからお前いけよ。 なっ!?」
「は? ヤダ」
どうしてオレが直弥の為にナンパしなくちゃならないんですか。
ビュウッと吹いた冷たい10月の風に黒い髪を揺らすと、オレはズボンのポケットに入れていた携帯を取り出す。
「なあなあ、いいじゃんかよー」
直弥がまだ何か言ってるけど無視で。
今の時間を確認すると、オレはまたポケットに携帯をしまい
「悪いけどオレ、今日は急ぐから」