アラサーだって夢をみる【12/23番外編追加】
7月に入っても蒸し暑い日が続いていたある日。

父の墓参りに行っているはずの母から連絡が入った。
帰りに気分が悪くなって動けないという。

「熱中症じゃない? 涼しいところで休んでて」

すぐに迎えに行かないと。

でも――
今日は友樹が休みで家にいるのだった。

いっそいなければ余計な心配しなくていいのに。
あの日から、何か漠然とした不安が続いている。

部屋でゲームをしていた友樹に状況を話すと心配だからすぐ行けと言う。

「大丈夫だと思うからそのままゲームしててね」

そう言ったが、友樹はあっちで待ってるよとリビングへ移動してしまい、行ってらっしゃいと手を振る。
ぷう太は少し離れたところに座って私を見つめていて、その姿に後ろ髪を引かれながら家を出た。


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お寺に着くと、母は客間でテレビを観ながらプリンを食べていた。

「もう! 平気なら連絡してよ!」

思わず声が大きくなってしまった私に、どうしたのと不思議そうな顔をする。

奥様が「あら、沙理ちゃん」と声をかけてきて、
私に連絡した時は起きていられないほど具合が悪そうだったと教えてくれた。

「御堂の空調が効いていなかったみたいでね、ごめんなさいね」

「いえ、お世話になってしまって、すみません」

元気になっているとはいえ置いて帰るわけにもいかず、でも家も気になるしどうしようと思っていると母が立ち上がった。

「モモちゃん達が待ってるね」

お世話になりました、と奥様に挨拶し、歩き出した。

車に乗ってすぐ、母から「あんた大丈夫?」と言われた。

「大丈夫って何が? こっちの台詞でしょ」

「顔色が悪いわよ」

ちゃんと食べてる? ゲームのしすぎじゃないの?と質問攻めにされて相槌を打っていると、
「あんたは、本当に、いつまでも子供なんだから」とため息をつかれた。

その言葉が胸に刺さって何も言い返せない。

「ちゃんと言わないとわからないのよ」

子供の頃から言われ続けてきた言葉を繰り返されても黙っているしかできない。
母は私のやることにほとんど無関心で口出ししない人だったが、私の体調が悪かったり落ち込んでいるとこうやって色々言い出す。
きっと顔に出ているんだろうと思った。

(このままじゃだめだ…なんとかしなきゃ)

本当になんとかしないと、と焦りが抑えられなくなる。

母を降ろした頃には薄暗くなっていた。
友樹に今から帰ると連絡しても返事がないし、電話も出ない。
胸騒ぎがして、急いで家に向かう。

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