アラサーだって夢をみる【12/23番外編追加】
これ、なんだろう。
言われた通り開けてみた。
中にはCDとiPodが入っていた。
CDはちゃんとパッケージになっていて、三神さんと世良さんが並んでいる写真がものすごくかっこいい。
曲リストには5月に歌ってくれた曲が並んでいる。

iPodを再生すると本当に曲が入っていて、時が5月に戻るようだった。
しばらく聴いていると、私の大好きな歌が三神さんの声で流れてくる。


止まっていた時が動き出した…気がした。
さっきこじあけられた感情があふれてくるのを感じる。
波のように押し寄せて、氷が溶けるように気持ちが和らいでいく。
今日はこの歌と同じで、初雪が降ったのだから。

――嬉しい

こんな気持ちになるのはいつ以来だろう。

嬉しくて、嬉しくて、抑えられない。



三神さんはいつの間にか戻ってきていて、ラフな格好に変わっている。

「約束したろ?」

隣に座ってそう言った。
その胸元で銀色の小さなプレートが揺れている。

(持っててくれたんだ)

笑ってくれているはずの顔がぼやけて見えない。
もう枯れたと思っていた涙がぽろぽろとこぼれ落ちる。

「やっと泣いてくれたね」

よかった、と抱き寄せられて涙が止まらなくなる。

「会いたかった」

三神さんの腕に力がこもる。

「会いたくて…狂いそうだった」

言葉が途切れて、息づかいだけが聞こえた。

「わた、しも」

ずっと閉じ込めていた想い。

「私も…っ」

顔を上げると涙だらけの頬を撫でてくれる。

「会いたかった、です…!」

泣きそうな顔で微笑む愛しい人。

「三神さん…!」


忘れられるはずなんてなかった
一緒にいたかった
側にいて欲しかった
ずっとずっと
会いたくて

悲しくて、辛くて、寂しくて、消えてしまいたくて。

色んな気持ちがごちゃ混ぜになって爆ぜてしまった私は、三神さんにしがみついて泣き続けた。



 大丈夫だよ

 安心して

 そばにいるから  

 もう大丈夫だから



三神さんは優しい声でそう繰り返しながら、私が泣き止むまで抱いていてくれた。

ぷう太達もずっと周りにいたけど、吠えたり走り回ったりすることもなくて。
静かに見守ってくれているようだった。


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