アラサーだって夢をみる【12/23番外編追加】
同じブルゾンを着ている男女2人が入ってきた。
その後ろから母がひょっこり顔を見せて、思わず声が出るほど驚いた。

「すみません、お母さん」

「玲くん、今日も素敵ね〜。ほんと寿命が延びるわぁ」

(れ、れいくん…?)

母は満面の笑みを浮かべて三神さんと話している。
みんなは吠えもせず、尻尾をちぎれんばかりに振って来訪者を出迎えている。

「スーパーペットシッターだからね。三神家専属だから安心して」

「は、はぁ…」

昨夜から予想もしないことが続き過ぎて、どう反応していいかわからない。
そんな私を見た母はため息をついた。

「あんたは少し家から離れなさい」

モモを抱いて撫でながら「ずーっと暗い顔して引きこもってたでしょ。こっちが疲れたわ」とぼやいている。

「大丈夫だから、しばらくゆっくりしなさい」

三神さんは「じゃあお願いしますね」と母に笑いかけている。

みんなはおもちゃで遊んでもらったり、おやつをもらったりして楽しそう。
特にぷう太が私をみて尻尾を振りながら笑ってくれている。
出かけても大丈夫そうだろ?と言われ、頷いた私は、久しぶりに家を後にした。

三神さんは私の車を運転して、道慣れた様子で都市高に乗るねと言った。
訳がわからないままだったけど、さらに?マークが増える。

自然に走っているけど、どうして?
福岡は来たことないはずだけど。
三神さんは運転しながら、道が広くて車も少なくて走りやすいとか、今度ドライブ行こうとか話している。
しばらく走ると灰藍色の海が見えてきた。
海なんて随分来ていないなぁと思っていると「こっちにさ」と話しかけられた。

「スクール作ったから」

……?

「声優養成所作ったの。世良と一緒に」

「ええぇ⁉︎」


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