アラサーだって夢をみる【12/23番外編追加】
ホテルに戻ったのはちょうど陽が沈む頃だった。

茜色に染まる空とそれに溶けるような海。
夕闇に沈む街並み。
三神さんと再会して3回目の夜が来る。

気づけば、外はすっかり暗くなっていた。
空気が澄んでいるようで、タワーのクリスマスイルミネーションや夜景がとても綺麗で。
ずっと見てられそうだと思ってソファに座っていると名を呼ばれた。

「沙理」

横に座った三神さんは小さな箱を持っていた。
中には小さな宝石がついたリングともう一つ。

「指輪はしないだろ?」

ぷう太達と暮らし始めて、指輪はおろかネイルすらやらないと話したことを覚えてくれてたようだ。
手にしている銀色のプレートには三神さんに贈ったものと同じ刻印。

「お揃いだよ」

ネックレスをつけてくれた後、三神さんはゆっくりと言葉を紡ぐ。

「愛してるよ」

「結婚しよう」

「幸せにするから」

「ずっと一緒にいるから」

「俺の嫁さんになって」

うっとりするようないい声に聞き惚れていたけど、ふと思い出した。

「……もう婚姻届持ってましたよね?」

「うん。だから、今してるじゃんプロポーズ」

当然のように返される。

「あ、俺も幸せにしてくれよ?」と、触れるだけの優しいキスをしてくれたけど。

「……」

ここまでしてもらってるのに、また不安がよぎる。
こんな有り得ないような幸せが続くなんて、また何か起こるんじゃないかと怖くなる。

何と答えればいいかわからなくて黙っていると

「あの電話切った後さ」

三神さんは頭を掻きながら言った。

「俺、フラれたと思って死ぬほどショックでさ。ヤケになって危うく世良と寝るとこだったよ」

「そうなんですか…」

(へー……)

それを聞いて、ほんの今、不安に思っていたことから気が逸れた。

三神さんと世良さんかぁ
凄まじいくらい絵になるなぁ
でもどっちが上なんだろ
どっちも物凄い攻めキャラだしなぁ
うーん……

 
「どうせなんか想像してんだろ?
 そういうとこも大好きなんだよ」

ぎゅっと抱き締められた後、三神さんの声が少し陰を帯びた。

「ぷう太が怪我した時、どうして俺と別れたの?」

「それは…」

ちゃんと話さなきゃ。

友樹に浮気してない?って聞かれた時に初めて浮気してると自覚したことを。
してはいけないことをしてると思ったら急に不安になって、どうしたらいいかわからなくなって、三神さんに話すこともできなかったこと。
私のせいでぷう太が怪我したと思ったこと。
三神さんと離れることが一番の罰だと思ったことを正直に話した。
あまりにも自分が子供すぎて、呆れられても仕方ないと思ったのだけど。


< 118 / 128 >

この作品をシェア

pagetop