アラサーだって夢をみる【12/23番外編追加】
エピローグ〜次の夢〜
髪を撫でる手のひらと顔を舐める感触で目を開けた。
ぷう太の顔が目の前にある。 

「おはよう、沙理」

とびきりの微笑とキスで目覚めた朝は素晴らしいお天気で、夏の日差しが眩しい。

あれから、いくつか変わったことがある。
 
まず、仕事がしやすいようにとスクールの近くに引っ越した。
母も近くに呼んだので心配なく暮らせている。
 
あと、姓が変わって三神沙理になったこと。

そして最後は。

「玲二さん」

呼び方を変えるのにだいぶ時間がかかったけど、やっと慣れてきた。

友樹も時々遊びに来る。
最近、年下の彼女ができたと嬉しそうに写真を見せてくれた。
(実は世良さんが色々手配して出会わせたらしいけど)

犬を飼おうか悩んでるといいながらナツを撫でようとすると、ぷい、と玲二さんのところに行ってしまって「ちぇっ」とふくれている。
弟みたいで可愛い。
幸せになってくれたら嬉しい。


✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼


今日は特別な日だ。
玲ニさんと結婚式を挙げる日。

スクールが開設してバタバタしていたのと、私はそもそもそういうことに興味がないので気にしていなかったのだけど。友樹とも写真を撮っただけだったし。

でも、玲ニさんは勿論だったけど、「絶対やらないとダメ!!」と何故か世良さんが言い張って、準備から段取りまで仕切っていた。
といっても、身内だけ少人数の式なので気楽だったのだけど。

事務所の社長さんご夫妻がスクールの視察も兼ねて東京から来ると聞いて緊張していた。
玲ニさんがとてもお世話になった人と聞いていたけど、世良さんが全然気を使わなくていいからねと言う。

実際に会うと、ご夫婦ともに気さくなお人柄で私をとても気に入ってくれたようだった。
こんなにお似合いのカップルは見たことないと褒めちぎられて恥ずかしかったけど、
玲ニさんと似合ってると言われるのはお世辞でも嬉しい。

母はあんたもちゃんとすれば綺麗になるのねと言い、あとは世良さんの接待を満喫している。
ぷう太達も可愛くドレスアップして、川上さんご夫婦に付き添われ、特別席で参列してくれる。


天空のチャペルは、雲ひとつない青い空と蒼い海に浮かんでいるようで、まさに絶景だった。

大好きな街で大好きな人達に祝福されて。
愛する人と愛する家族に囲まれて。

こんなに幸せでいいのかなと不安がよぎるのは性格だから仕方ないと割り切った。


それでもみんながとても嬉しそうに笑ってくれていて、式を挙げて良かったと心から思った。

何より、玲ニさんのタキシード姿がかっこよすぎて気が遠くなった。
世良さんの正装は二次元イラストが抜け出して来たとしか思えなくて、脳がとけそう。
仲良しの誠君と薫君もとんでもなくかっこよくて目の保養とかいうレベルじゃない。

その4人がサプライズだと何曲か歌ってくれたんだけど、それが凄すぎて。
感動のあまりボロ泣きしてしまって、みんなをオロオロさせてしまったり。

写真や動画もたくさん撮って、特別で素敵な一日は終わった。


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家に帰ってぷう太達とのんびりしていると玲ニさんから「奥様」と抱き寄せられた。

「何かご不満は?」

「玲二さんは?」

「沙理を好きに出来ないことかな」

……

(あれで好きにしてないのね)

「沙理は?」

不満なんてあるはずもないけど、ちょっと言ってみた。

「玲二さんがこの頃エロゲーに出てくれないことかな」

はははと明るい笑いの後、「じゃあ、次は凄いドSで鬼畜な役でもやろうかな」と言われた。

「ほんと!?」

思わず身を乗り出してしまって、あ、と思ったら、玲ニさんが目を細めてニヤリと笑った。

「役作りに協力するなら、やってもいいけど?」
 
甘い囁きとキスに、また変なスイッチを入れちゃったと思った。
ぷう太達はさっさと自分達のベッドへ去っていく。
 
大好きな声とあたたかい腕に包まれて私は夢心地になる。




でも私はまた夢をみる。

今度は、贅沢だけどいつか現実になりそうな夢。
大好きな人達にスペシャルな作品を作ってもらうこと。

でも、まだ玲二さんには教えない。

だって教えたら。

「俺一人で十分だろ?」

そう言うに決まっているのだから。










Fin


〜アラサーだって夢をみる〜
(2012.2〜2024.12)




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