アラサーだって夢をみる【12/23番外編追加】
「握手だけでいいの?」
「え?」
「サインいらないの?」
意外そうに問われて、慌てて答えた。
「あ、いえ、今何も持ってなくて」
まさか本人に会えるなんて思うはずもないし。
三神さんは「そう」と頷いて言った。
「あのさ」
「今から俺飯食うんだけど一人で食べるのイヤなんだよね」
少しの間のあと「一緒に食べない?」と聞かれた。
「一緒に……?」
一緒って、私と?
三神さん、誰かと一緒じゃないのかな?
「三神さん、お一人なんですか?」
「そう、お一人」
ぷっと吹き出した三神さんは「サインでも何でもしてあげるからさ」と続けた。
何でもという言葉が脳内で反復して、私はまたわけがわからなくなった。
「ダメかな?」
ああ、これはやっぱり夢なのだ。
現実感がなくなって、宙に浮いてるみたい。
夢の続きをもっと見たくなって、私は「行きます」と答えた
「良かった」
三神さん嬉しそう。
私も凄く嬉しくなってきた。
「あ、ちょっと部屋に取りに行きたいものがあるので」
どうせなら写真集にサインして欲しい。
すぐ戻りますと言おうとしたが、何故か三神さんは立ち上がった。