アラサーだって夢をみる【12/23番外編追加】

広い駐車場は空いていたけど、三神さんは入り口から離れた隅のほうに車を停めた。

「ここ、監視カメラの死角なんだよ」

「あ、そうですか」

そうだよね。
こんなとこ見られたら大変だもんね。
三神さん、人気あるから。
早く降りなきゃ。

「じゃあ、私、行きます」

「本当に」

ありがとうございましたと言い終わらないうちに、柔らかい唇が触れた。

「目立つとこじゃキスできないだろ?」

何心配してるか知らないけど、と私の頭を撫でて三神さんは言う。

「声優の顔なんて普通の人はわかんないよ」

キスされて抱き締められて、愛してるよと囁かれて。

――私も大好きです。

心の中でそう応えた。

言葉にする事は出来ないから。
代わりに涙が出そうになって唇を噛む。

泣いたらだめ。
その前に車を降りなきゃ。

早く一人になりたい
そうしたら、好きなだけ泣ける。

無理やり笑顔を作って顔をあげて。

「それじゃ……」

言いかけた言葉は途中で遮られた。



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