アラサーだって夢をみる

覚めない夢


車の中で三神さんは、今日の収録は何をやるとか、次の仕事はこんなのだよとかそういう話をしてくれた。
道も空いていて、あっという間に空港に着いて。
一瞬だけ、昨日の事を思い出したけど、車は普通に入り口付近に停まった。

空港の中まで送ってくれるというのを、泣いちゃうからいいですと断って。
もう一度だけキスをして、少しの間、胸に顔を埋めて名残を惜しんで。
それじゃ行きますと顔を上げた私に、

「待ってるから」

三神さんはそう言ってにっこり笑ってくれた。
私は頷いて車を降り、去っていく車が見えなくなるまで見送った。



目を閉じて、深呼吸をして。

駐車場を後にして、出発ロビーへ向かう道をゆっくりと歩く。
一歩、また一歩と現実へ。

< 65 / 109 >

この作品をシェア

pagetop