アラサーだって夢をみる【12/23番外編追加】
完全にタガが外れた、と自覚はあった。

手を後ろで拘束して呼びかける。

「沙理、ほら、起きて沙理」

朦朧としてされるがままだった肢体が急に強張る。

(拘束されてることに気づいたか)

「沙理、気持ちいい?」
「言わないとわからないよ」

俺の声に感じてる姿を見るとまた理性が吹っ飛ぶ。

沙理が可愛すぎて、俺、もう狂いそうだよ
こんなに欲しいと思ったことないんだよ
   
俺がどれだけ沙理を愛してるか
どうしたら伝えられるかわからないんだよ
   
  宝石も花束も女が喜ぶような贈り物を
  何も、何も贈ることが出来ない
  時を忘れて一緒に過ごすことも出来ない

  俺の心も身体も全部 
  望んでくれれば俺の全部あげるのに

  俺に縋ってくれれば
  すぐ奪うのに

どれくらい経っただろう。
腕の中で喘ぎ続ける沙理を抱きしめて、その身体が震えていることに気が付いた。
頬に触れた手が涙で濡れる。

ああ、やりすぎた

俺はどうかしてしまっている。
もう、どうしていいかわからなくて、本当は怖かったと口にしてしまった。
ずっと不安だった想いが溢れて言葉が止まらない。

「みか…み…さん」

沙理が俺を見つめる。

「手……痛いです」
   
解いたら、俺から離れてしまう気がして迷う。

「逃げたりしませんから」

「私、三神さんのものですから」
 
小さな声で、でもはっきりと言い切る沙理の言葉に俺は気圧される。

「解いて下さい」

逆らえずに拘束を解く。
沙理の指が俺の髪をかきあげる。

「三神さん」

掠れた声で初めて告げられた。

「愛してる」

愛してる、と何度も囁かれて、抱いてる腕が震える。

「もっと滅茶苦茶にして
 三神さんのことしか考えられないようにして
 もっと、して…下さい」

沙理の身体から熱が伝わってくる。

ああ
もう、俺、狂ってる
死にそうなくらい愛してる
俺の中に閉じ込めて
どこにも逃げられないように

壊してしまって
そして俺の身体を分けてあげよう
細胞が混ざるまで犯して同じ身体になって。

こんなことを考えつく自分に笑いが込み上げる。



愛を告げてくれる唇にそっとキスをして。

俺の台詞は、もう決まっている。


「俺の全てをあげるから」

「壊しても、いい?」


答えに困るような問いかけにも沙理は表情を変えない。

少しの間の後に。

頷いて。

三神さん、愛してると繰り返す。

「ありがと」

愛しくて
ただ愛しくて

腕の中でいつまでも
俺を求める沙理が愛しくて
何もかも忘れて抱き続ける

心も身体もひとつになって
ずっとこうして愛し合って
 
こんなに愛せる女に出会えるなんて
今この瞬間に存在していることを、生まれて初めて感謝した。
   
  
  絶対に手に入れる。
  俺だけのものにしてみせる。



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