恋愛小説のススメ
「ごめん……。やっぱり本当のことなんて聞けないよ………。」



聞くのが怖くて、思わず口からコトバが勝手に出てしまった。




だめだな。


もう………


‘あたしは捨てられる’




こらえきれずあたしは座っていたベンチから立ち上がり、小走りでその場を離れようとした。



「楓さんっ！！」


あたしの名前を大声で叫ぶと、優くんはあたしの腕を掴んで引き止めた。




「違うよっ！俺たちは楓さんが思ってるような関係じゃないし、今から話すことだって楓さんが思ってるようなことじゃないから！ちゃんと聞いてて。全部話すから。」



怒鳴り口調だった声もだんだん落ち着き、優くんは話し始めた。



「俺、半年前に小説書いて、コンクールに応募したんだ。最初は小さな賞でも取れたらいいって思ってた。でも、大賞……取っちゃったんだよね。その時は本当にびっくりした。」



ちょっと信じられない話だったけど、あたしは静かに聞いていた。


優くんが話を続ける。




「それから編集者の人から連絡がきて、‘本格的に小説を書かないか’って言われたんだ。俺自身嬉しかったし、そんなチャンスはめったにこないと思った。だから俺はその日から小説家になったんだ。今まで黙っててごめんね。」
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