恋愛小説のススメ
「これ、お母さんからです。野菜と肉じゃが。良かったら食べて下さい。」


あたしはおばさんに袋を手渡した。



「いつもありがとうね。お婆さんにもよろしくお伝えしといてね。優也、部屋にいると思うから上がってちょうだい。」


あたしは彼の部屋がある2階に上がった。




「優くん?」


彼の部屋の扉を静かにノックしてみる。



「楓さん?入って。」


あたしは扉を開けて部屋に入った。



久しぶりに入った彼の部屋は、前に来たときとほとんど変わらず、きちんと整頓されていた。


部屋中見渡して見ても、彼の姿が見当たらなかった。



「優くん?何処にいるの?」

「ここにいるよ。」



カーテンが小さく揺れるベランダから彼の声がした。


ベランダ?


何だろう?



とりあえずあたしはベランダに近寄ってみた。


「楓さん、こっち。見て。」



ようやく彼の姿を見つけると、彼は少し真剣な顔で天体望遠鏡を覗いていた。


「なぁに?見せたいものって。」

「もうすぐだと思うから。これ見てて。」


言われるがままにあたしは望遠鏡を覗いた。



少し隣を見てみると、彼が腕時計で時間を見ていた。
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