愛を待つ桜
双葉は夏海の様子を伺いつつ、


「不満があるならハッキリ言った方がいいわよ。秘密はいいけど不満はダメ。小出しにするのが長続きの秘訣よ」


結婚14年という双葉の言葉は重い。
でも夏海たちは、愛情で結ばれた如月夫婦とは違うのだ。

夏海は軽く首を振り、


「言わない約束で結婚したから……2度と過去のことは言わないって」

「約束は破るためにあるのよ」

「弁護士の妻がそういうこと言っていいの?」

「当たり前じゃない!」


双葉は、聡と智香とのゴタゴタを知っていた。
裁判沙汰になったため、嫌でも耳にしたのだろう。

反面、夏海との関係はほとんど知らなかった。
彼女は夫をせっついて聞き出すこともせず、夏海はそんな双葉を尊敬していた。


「双葉さんは凄いな。如月先生も理解があって、素敵な旦那さまだし。羨ましい」


夏海は如月家のような家庭が持ちたいと願った。

しかし、果たして自分と聡でそんな家庭を築き上げられるのだろうか?

全く自信がない。
だが、そんな夏海の憧れを、双葉はあっさりと覆した。


「あ、そう? でも、あれで結構遊んでるのよ。上手くやるから尻尾は掴ませないけどね。単独出張のたびに、現地で調達してると睨んでるわ」

「え? 本当に?」

「家庭を最優先にすること、後は病気さえ持ち込まなきゃ、多少のことには目を瞑る気でいるもの」


まさかあの如月に限って、と思うが、そうでもないらしい。


「エッチだって子供が生まれるたびに減って……今じゃ月イチだし。まあ、もうすぐ40だから仕方ないんだろうけど。ああ、10年前が懐かしい!」


双葉のあまりに明け透けな物言いに、その方面に不慣れな夏海は赤面してしまう。


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