愛を待つ桜
聡は心の中で舌打ちする。


(――なんでこんな余計なことを言ったんだ!)


間違った場所で切り札を使ってしまった。

自分は匡から聞いて全てを知っている。そう告げるには、もっと有効な使い方があったはずだ。

例えば……悠が聡の子供でないと証明されたとき、とか。


夏海の自信に満ちた素っ気ない態度に、つい口を滑らせてしまった。
その不用意なひと言に取り戻しかけた信頼と愛情は、一瞬で崩れ去ろうとしている。

慌てて夏海の腕を掴み、力一杯引き寄せて、その震える体を抱き締めた。


「悠は私の子だ。両親にもそう話したし、正式に届けも出した。――この話はもう止めよう。夏海、私は」


耳元でそう囁き、キャミソールタイプの部屋着を夏海の体から脱がそうとする。

肩紐をずらし……首筋から肩にかけて唇をなぞらせる。


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