愛を待つ桜
それは聡の言葉を聞いてから、どうしても気になっていることだった。
会う機会があれば、必ず尋ねてみたいと思っている。

自分の上司だった匡は、なぜ兄の聡に嘘を吐いたのか?

それだけではない。

義父となった実光は、3年前に比べ手の平を返したように非好意的だ。
匡は父親にもそう言ったのかもしれない。

だが、自分が匡に恨まれるような覚えなどない。

考えれば考えるほど、夏海には訳が判らなかった。


そんな夏海に、聡は苦々しそうに答える。


「どうしてもと言うのなら……由美さんの子供が生まれてから時間を作る。ただ、匡とふたりきりでは絶対に会うな。私も同席する。ふたりで会ったときは、どんな言い訳も聞かんぞ」

「あなたは、まだそんな……」


確かに聡の言う通り、今となっては何も立証はできないだろう。
匡を問い詰めても、聡の言葉と同じように答えられたら、お互いに水掛け論になるだけだ。

しかも聡は、夏海の言葉より匡を信じている。


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