愛を待つ桜
☆。.:*:・゜★
全てが終わった後、4月の冷たい風に素肌が晒され、夏海は我に返った。
慌てて、ブラウスの前をかき寄せ、聡に背中を向ける。
「あっと……君、あの、なんと言えばいいのか……」
聡の手が肩に触れ、夏海はパニックになった。
「イヤッ!」
訳も判らずクローゼットから飛び出し、そのまま廊下や階段を駆け回り……。
ようやく見つけた婦人用のトイレに飛び込むと、個室で下着を整えた。
顔を洗い、鏡を見たとき、そこには『後悔』の2文字が映っていた。
(初対面の名前も知らない男性と、私はなんてことをしてしまったの!)
女子校育ちで男性は苦手だった。もちろん、簡単に体を許すつもりもなど全くなかったのに……。
キスされた瞬間、夏海は長く思い描いていた運命の男性に、とうとう出逢えたと思ったのだ。
しかし、夏海を襲ったショックはこれで終わりではなかったのである。
トイレを出た夏海は大急ぎで両親を探した。
一刻も早くおいとましようと、リビングの社長夫妻に挨拶に行ったときのこと。
「ああ夏海さん、次男の稔さんはご存知よね? こちらが長男の聡さんと、長女の静さんです。静さんはあなたと同い歳じゃないかしら、ねえ?」
あかねに紹介された瞬間、夏海の心臓は止まった気がした。
彼女の目の前に立っているのは、ほんの少し前に信じられないほどの熱い時間を過ごした相手。それがまさか常務の長兄だったなんて。
「夏海さん? どうかなさったの?」
無言で立ち尽くす夏海に、あかねは心配そうに声を掛ける。
そのあかねの隣で、聡も雷に打たれたように固まっていた。
「あ、いえ……はじめまして、織田夏海です。よろしくお願いします」
喘ぐように言うと、そのまま俯き目を閉じた。
「ようこそ、夏海さん。妹の静です。へぇ、夏海さんの口紅って淡いピンクなのね。とってもお似合いだわ! ね、聡兄様」
静の言葉には微妙な色があった。
だが、余裕のない夏海はそのまま聞き流してしまう。
全てが終わった後、4月の冷たい風に素肌が晒され、夏海は我に返った。
慌てて、ブラウスの前をかき寄せ、聡に背中を向ける。
「あっと……君、あの、なんと言えばいいのか……」
聡の手が肩に触れ、夏海はパニックになった。
「イヤッ!」
訳も判らずクローゼットから飛び出し、そのまま廊下や階段を駆け回り……。
ようやく見つけた婦人用のトイレに飛び込むと、個室で下着を整えた。
顔を洗い、鏡を見たとき、そこには『後悔』の2文字が映っていた。
(初対面の名前も知らない男性と、私はなんてことをしてしまったの!)
女子校育ちで男性は苦手だった。もちろん、簡単に体を許すつもりもなど全くなかったのに……。
キスされた瞬間、夏海は長く思い描いていた運命の男性に、とうとう出逢えたと思ったのだ。
しかし、夏海を襲ったショックはこれで終わりではなかったのである。
トイレを出た夏海は大急ぎで両親を探した。
一刻も早くおいとましようと、リビングの社長夫妻に挨拶に行ったときのこと。
「ああ夏海さん、次男の稔さんはご存知よね? こちらが長男の聡さんと、長女の静さんです。静さんはあなたと同い歳じゃないかしら、ねえ?」
あかねに紹介された瞬間、夏海の心臓は止まった気がした。
彼女の目の前に立っているのは、ほんの少し前に信じられないほどの熱い時間を過ごした相手。それがまさか常務の長兄だったなんて。
「夏海さん? どうかなさったの?」
無言で立ち尽くす夏海に、あかねは心配そうに声を掛ける。
そのあかねの隣で、聡も雷に打たれたように固まっていた。
「あ、いえ……はじめまして、織田夏海です。よろしくお願いします」
喘ぐように言うと、そのまま俯き目を閉じた。
「ようこそ、夏海さん。妹の静です。へぇ、夏海さんの口紅って淡いピンクなのね。とってもお似合いだわ! ね、聡兄様」
静の言葉には微妙な色があった。
だが、余裕のない夏海はそのまま聞き流してしまう。